冬鳥として日本に渡来するジョウビタキは、どのくらい同じ場所に滞在し、どのタイミングで越冬地を離れるのでしょうか。
今回は2025年秋から2026年春までの約4か月間にわたる自宅敷地内での観察記録をもとに、オスとメスの出現タイミング、縄張りの変化、日々の行動、そして滞在期間について整理しました。
越冬環境
本記事は初観察日の11月9日から約4か月間にわたる記録をもとにしています。最初に確認したのはメスで、およそ1か月遅れてオスの存在を確認しました。 観察場所は自宅敷地内で、裏手に川、周囲には田畑や雑木林が広がり、日常的に猛禽類も目にする田舎の住宅です。
1.最初の一週間の行動
メスのジョビ子を初めて確認したのは11月9日です。前日は鳴き声が聞こえませんでしたが、その日は朝から「ヒィヒィ」と控えめな鳴き声が何度も聞こえてきました。庭木にとまったり、窓の近くまで来たりする姿を3度観察しました。いずれも鳴き声がして気づきました。
初日は雨が時々降っていましたが、ジョビ子は午前中と午後、雨の合間に小屋の屋根に姿を現し、元気に鳴いていました。
鳴き声は夜にも聞こえてきました。約4か月間の滞在で夜まで鳴いていたのはわずか数回しかありませんでした。鳴き声は激しいものではなく、「ヒッヒッ」と一定のリズムを保った落ち着いたものでした。
最初の1週間は縄張りを宣言するためか、電柱や電線といった目立つ場所や屋根などの高い位置で頻繁に鳴いていました。
また、電線上で鳴きながら黒い小さな塊状のペレットを何度も吐き出す行動を見せるなど、滞在初期から採餌が安定している様子がうかがえました。
電柱B
④⑤は滞在3日目のジョビ子の様子を捉えた写真です。電線で元気に鳴いていたスズメの群れに誘われるように姿を現しました。翌日にはさらに遠い電柱Aのてっぺんや電線にも現れました。猛禽が潜む雑木林のすぐ近くにある電柱で、トビ、アオサギ、ハシボソガラスが入り浸っているエリアです。
11月13日にはモズのオスが電柱Aのてっぺんで高鳴きをした直後に、近くの電線に現れました。ジョビ子は直前のモズの動きを確認していたはずです。
てっぺんを避け、少し離れた電線を選んでとまりましたが、去った直後にまたモズのオスが電柱のてっぺんにやって来ました。捕食者のモズはジョビ子にとって対峙したくない相手に違いありませんが、位置取りを慎重にし、ニアミスは織り込み済みだったのかもしれません。
最初の1週間は頻繁に目立つ場所で鳴いていましたが、ウチで過ごすうちに行動に変化が見られるようになりました。
大きな変化の一つは遠くの電柱や電線をほとんど利用しなくなったことです。それ以降は屋根の上や屋根から伸びた引込線で鳴くことが増えました。
また、庭木に降りる姿も見られるようになりましたが、地面近くに長く留まることは少なく、採餌のために地面に降りるときもすぐに身を隠せるように低木と行き来するような動きが中心でした。
全体として、縄張りは維持しつつも、より慎重な行動に移行していった印象です。
2.なぜ行動が変わったのか
ジョビ子の行動の変化は周囲の環境が影響している可能性があります。 自宅周辺には常連のハシボソガラスやトビに加え、オオタカやチョウゲンボウなど、小鳥にとって脅威になる猛禽類も出没します。
実際の観察でも、ミヤマガラスの群れが接近すると屋根の隙間に隠れたり、猛禽類が去った後に再び鳴き始めたりする様子が見られました。 これらのことから、安全性を考慮してとまる位置や高さを調整していたのではないかと推測しています。
3.オスの出現
オスのジョビ男を初めて目撃したのは12月8日です。行動や出現の仕方から考えると、実際にはそれ以前から周辺にいた可能性が高いと考えています。
4.オスとメスの関係
12月末まではメスは敷地の左側、オスは右側を縄張りにし、行動範囲が分かれていました。この時期には同じ場所で目撃することはほとんどなく、それぞれが距離を保ちながら生活していたと考えられます。
変化が見られたのは年明けからです。1月に入ってから、オスがメスの縄張りに入り込む様子が見られるようになりました。 同じ庭木や低木エリアに現れることが増え、時間差で同じ場所を利用する様子も見られました。
オスが現れた数分後にメスが姿を見せる、あるいはその逆といったケースがありましたが、オスがメスにアピールする様子や一緒にいる姿は確認できませんでした。
また、メスの縄張りだった裏庭や屋根から連日聞こえてきた鳴き声が必ずしもメスだけのものではない可能性も出てきました。 特に1月以降はオスの出現頻度が増え、2羽の姿が見えない状態で鳴き声だけが聞こえることも多くなりました。そのため、実際にはオスが鳴いていたケースも少なからずあっただろうと考えています。
5.滞在終了
ジョウビタキの鳴き声を最後に聞いたのは3月19日の18時過ぎでした。 その日は庭木にとまっているのをそれぞれ別の場所で目撃しました。その日を境に敷地内での気配はなくなりました。そのため、今シーズン渡来してきた2羽は3月20日早朝に移動したと推定しています。
前日と前々日は早朝に雨が降っていましたが、3月20日は快晴で風もなく穏やかだったので、天候の条件が整ったことで出発を決めたのだと思います。
初観察日が滞在初日だった可能性が高いジョビ子は11月9日から3月19日までの4か月余り、我が家で過ごしたことになります。
まとめ
今回の観察から、ジョウビタキの越冬行動についていくつかの特徴が見えてきました。 メスのジョビ子が先に縄張りを形成し、初期は目立つ場所で主張する行動が見られ、次第に慎重な動きへと変化していきました。
オスのジョビ男は遅れて姿を現し、当初は自宅敷地内の別のエリアにいましたが、年明け以降は縄張りが重なり始めました。
また、カラスや猛禽類との遭遇といった周囲の環境が行動に影響を与えている可能性も高く、状況に応じて行動を変化させていった様子がうかがえました。
今シーズンに我が家にやって来たジョウビタキは、寒さが和らいできた3月中旬に2羽同時に姿を消し、北へと旅立ちました。
また戻ってきてくれることを願いつつ、渡り鳥としての彼らの旅路にエールを送りたいと思います。
元気でね、またね!



